運送業の独立開業とは、自ら事業を立ち上げて運送の仕事を請け負うことを意味します。
しかし、運送業での独立開業は魅力的ではあるものの、同時に経営上のリスクも存在するなど、決して簡単に成功できるわけではありません。
中には「そもそも運送業での独立開業はどのように行えば良いのかわからない」という人もいるのではないでしょうか。
そこで、この記事では、運送業で独立開業を考えている方に向けて、具体的な手順や注意点、メリット・デメリット、成功のポイントについて詳しく解説します。
独立開業の選択肢とは
まずは、独立開業の選択肢にどのような方法があるのかについて見ていきましょう。
個人で独立開業する方法
個人での独立開業は初期投資が比較的低く、儲かる可能性が高い方法です。
自分が運転者となることで人件費を抑えられる他、一定の需要がある地域や時期を狙って稼働することで効率的に利益を得られます。
起業には適切な資格取得、車両の用意、運送業許可の申請が必要とはなるものの、顧客との信頼関係を築ければ安定した収入を得ることも不可能ではありません。
場合によっては長期的な契約を結ぶことで安定した収入が期待できるでしょう。
法人を立ち上げる方法
法人を立ち上げて独立開業する方法は、長期的に見て利益を得るチャンスとなります。
法人を設立するためには会社設立に必要な定款を作成し、法務局での登記手続きを行いつつ、業務に必要な車両や設備を揃え、効率的な運行管理体制の確立が必要です。
フリーで独立するより大変ですが、大口顧客との取引がしやすくなり、資金調達も比較的容易に行えるのが魅力と言えるでしょう。
組織として社員を複数雇用すれば個々の業務負担が軽減されると同時に事業拡大も期待できるなど、法人は集団の力を最大限に活かせるのが魅力ではないでしょうか。
ただし、法人設立には初期費用がかかり、維持費も発生するため、綿密な事前計画と必要な資金の確保が欠かせません。
他にも優秀な人材の確保と育成、さらには効率的な運営体制の構築が必要となるので、簡単に稼げるわけではないことを十分理解しておかなければいけません。
フランチャイズを利用する方法
フランチャイズを利用した独立開業は、既存の成功したビジネスモデルを活用するため、リスクを軽減しながら事業を開始することが可能です。
フランチャイズ元からのアドバイスやサポートが受けられるため、初心者や未経験者でも比較的容易にスタートできます。
フランチャイズはブランド力を活用できるので、集客や営業活動において有利に働くことが期待できる他、営業活動の負担も軽減されます。
結果的に自分のビジネスに集中することができ、一定の利益獲得が可能です。
しかし、フランチャイズ契約にはロイヤリティや加盟料が発生するのが通例であり、初期コストや運営コストに影響を与えることが珍しくありません。
契約条件や運営方針に縛られることもあるからこそ、自分の経営スタイルと合致するかを事前によくご検討ください。
独立開業に必要な準備と資格
次に、独立開業に必要な準備と資格について見ていきましょう。
資格取得と管理者の任命
運送業で独立開業するためには、運行管理者資格の取得が重要です。
この資格は道路運送法に基づき、事業者が安全かつ効率的に運送業務を行うために必要な知識を証明するものとなります。
運行管理者試験に合格することで資格を取得できるため、事前に取得しておきましょう。
なお、独立開業には事業所ごとに1名以上の専任の運行管理者を任命する義務があります。
主に、管理者の役割は以下の通りです。
- 運転者の労働時間の管理
- 車両の維持管理
- 安全運行の指導
以上の業務を適切に行うことで、運送業務全体の安全性や効率性が向上し、結果として顧客満足度や事業の信頼性に繋がるでしょう。
運送業に必要な許可申請
運送業を開始するには、様々な許可申請が必要です。
主に必要となる許可申請には以下のようなものがあります。
- 一般貨物自動車運送事業に関する許可
- 特定貨物自動車運送事業に関する許可
- 第一種貨物利用運送事業に関する許可
以上の許可を得るためには営業所や車庫の用意、車両の適正配置、運行管理規定の策定など、いくつかの要件を満たす必要があります。
許可申請には詳細な書類の準備と提出が求められ、審査を経て初めて事業を開始することが可能です。
中でも、営業所の所在地や保有する車両の管理が重要で、上記の要素が適切に整備されていないと許可を得ることが難しくなるため、十分に注意しましょう。
加えて、運行管理者の資格や保険の加入も法律で定められているので、事前の準備が欠かせません。
貨物車両の用意
運送業で独立開業を目指す際には、業務に使用する貨物車両の用意が不可欠です。
貨物車両の選び方については以下を参考にすることを推奨します。
- 事業に最適なタイプの車両を選定すること
- 荷物の種類や配送地区を考慮すること
- 新車か中古車かを選択すること
新車は安全性や耐久性が保証されている他、過度なメンテナンスが必要ないのが魅力です。
一方で、中古車は初期費用を抑えられるものの、メンテナンスにかかるコストやリスクも併せて検討する必要があります。
なお、車両を用意する場合は保険や税金も予算に組み込んでおく必要があるでしょう。
単に購入費用だけかかるというわけではなく、ランニングコストもかかるという点を考慮しておくことを忘れてはなりません。
独立開業のメリット
次に、独立開業のメリットについて見ていきましょう。
初期費用が比較的安い
運送業の独立開業において、初期費用が比較的安いことは大きなメリットです。
一般的に起業する際には多額の資金が必要ですが、運送業では自分が運転手として稼働することで、初期投資を大幅に削減できます。
具体的には、必要な車両費用と基本的な運営資金があればスタートが切れるでしょう。
事務所や車庫の設置も最小限で済むため、余分なコストも抑えられます。
事業のリスクを低減して短期間での初期投資回収が期待できるので、運送業で活躍したい人にとっては魅力的です。
在庫管理の負担が少ない
運送業は他の業種と比較して在庫管理の負担が少ない点が魅力の一つです。
一般的な小売業や製造業では、大量の在庫を抱えることが必要で、それに伴う管理の手間やコストがかかります。
一方で運送業では、顧客の荷物を配送するため自社で在庫を保管する必要がないため、在庫管理の手間を大幅に削減できます。
在庫がないので、廃棄リスクや品質保持も必要なく運営上の手間を大幅に軽減可能です。
在庫管理の負担がない点は非常に魅力的ではないでしょうか。
需要が将来的に期待できる
物流業界全体の動向を考慮すると、運送業の需要が将来的に期待できる点もメリットです。
近年はインターネットショッピングの普及により宅配需要が急増しています。
高齢化社会の進行や都市部への人口集中により、地域内での輸送ニーズも急増しています。
結果的に運送業が求められ、安定した需要が見込まれるわけです。
昨今は環境に配慮したエコロジカルな配送サービスや高速道路網の充実も運送業のプラス要因となっており、持続可能なビジネスを構築することが難しくありません。
需要の安定を求めている人にとっては魅力的な選択肢と言えるでしょう。
フランチャイズのサポート
運送業での独立開業を考える際に、フランチャイズを利用する方法は非常に有効です。
フランチャイズのサポートを受けることで、独立開業のリスクを大幅に減少させられます。
具体的には、以下のような点が魅力的と言えるでしょう。
- 既存のブランド力を活用して顧客からの信頼を獲得しやすくなる点
- 本部からの研修やマニュアル、運営サポートを受けられる点
- 業務の効率化や品質の向上が図れる点
以上の理由により、初めて運送業を始める方でも安心して事業をスタートできます。
フランチャイズはマーケティング支援や顧客獲得のアドバイスなども提供してもらえるからこそ、スムーズな事業展開を行いたい人におすすめです。
独立開業のデメリット
次に、独立開業のデメリットについて見ていきましょう。
重労働のリスク
運送業は他の業種と比較しても体力面・精神面での負担が大きく、かなりの重労働です。
特に個人で独立開業する場合、運転に多くの時間を費やすことが避けられず、長時間労働が常態化する可能性があります。
荷物の積み下ろしなどの作業は肉体的な負担が大きく、健康管理が欠かせません。
過酷な労働環境では過労や事故のリスクもあるため、独立開業を検討する際には労働時間の管理や適切な休息の確保、健康状態の維持に向けた対策を練ることが求められるでしょう。
自己管理を徹底することでリスクを小さくでき、長期的に働けるのではないでしょうか。
事故補償のリスク
運送業においては、交通事故のリスクが常に存在します。
中でも独立開業の場合、事故が発生した際の補償や法的な責任は全て自社で負う必要があり、仮に交通事故・人身事故を起こしてしまった際のリスクは相当なものとなります。
損害賠償や車両の修理費用、さらには信頼性の低下など影響は数え切れません。
そのため、まずは適切な保険に加入し、万が一の事態に備えましょう。
ドライバーの安全運転教育や定期的な車両点検も実施しつつ、事故のリスクを常に軽減できるようにしておくことが欠かせません。
維持費用の継続
運送業を独立開業する際は、継続的な維持費用が欠かせません。
主に必要な維持費用としては以下のようなものがあります。
- 燃料費
- 保険料
- メンテナンス費用
- 車両の減価償却費
費用は定期的に発生し、収益が安定しない初期段階では負担となるのが通例です。
運送業は経済状況や燃料価格の変動によっても影響を受けやすいため、常にコスト管理をきちんと行う必要があるでしょう。
なお、経費を抑えるには効率的なルート設定や車両の燃費を改善するのが有効です。
新しいルートの開拓や渋滞を避けるルート設定、エネルギー効率に優れた車両の導入などを行うことを推奨します。
成功と失敗のポイント
最後に、成功と失敗のポイントについて見ていきましょう。
効果的なスタッフ採用
運送業での独立開業を成功させるためには、効果的なスタッフ採用が不可欠です。
適切なスタッフを選べば業務運営の効率が向上し、顧客満足度も向上します。
採用の際には、運転技術や知識だけでなくコミュニケーション能力やチームワーク力も重視することが重要となるでしょう。
面接や適性検査などを活用しつつ、スタッフが長期的に働きやすい環境を整え、人材が離れないように工夫することも必要です。
具体的には研修やスキルアップの機会を提供することでスタッフのモチベーションを維持し、離職を防ぐのが有効と言えます。
効率的な物流管理
運送業の成否を分ける大きな要素として、効率的な物流管理が重要です。
物流管理が適切に行われれば、業務の効率化とコスト削減が実現し、顧客満足度の向上につながります。
まずは最適なルートを選定し、無駄のない配送計画を立てましょう。
最近ではGPS技術や物流管理ソフトウェアを活用することで、リアルタイムの追跡や配送状況の管理が容易になっているため、急な変更やトラブルにも迅速に対応できます。
在庫管理や倉庫運営をスムーズに行うためのシステムを導入すれば、より全物流全体の効率化が可能です。
流通面で有利な立地
運送業の成功には、流通面で有利な立地の選定が不可欠です。
適切な立地を選ぶことで配送時間の短縮や燃料費の削減に繋がり、効率が向上します。
具体的には主要な道路や高速道路にアクセスしやすい地点、物流センターや主要都市に近い場所を選ぶようにしましょう。
上記のような場所に事業所や倉庫を設けることで、配送ルートの選択肢が増え、納品時間の短縮に繋がります。
都市部に近い立地は顧客への迅速な対応を可能にし、サービスの質向上にも効果的です。
立地選定は初期投資にも影響を与える要素だけに、慎重に判断する必要があるでしょう。
運送業開業に関するまとめ
運送業での独立開業には、個人事業・法人設立・フランチャイズの三つの選択肢があり、それぞれに応じた準備と資格が必要です。
どの方法もそれぞれメリットとデメリットが存在するため、これから開業を検討している方は具体的にどのような利点・欠点があるのかを調べておきましょう。
事業の規模によって開業方法が変わるので、まずは無理のない範囲で事業計画を立て、安定して収益を得られる基盤を構築していくことが重要となるでしょう。
まずは当記事で解説した内容を参考にしつつ、運送業開業を検討してみてはいかがでしょうか。
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