ディストリビューターの役割は?メーカー側と販売店側のメリット・デメリット

商品が工場から私たちの手元へと届くまでの間には、さまざまな過程があります。 

その中で、ディストリビューターは大切な役割を果たしています。

彼らはメーカーから商品を受け取り、小売業者や消費者にまで運ぶ「橋渡し」の役割を担う存在です。

ただし、ディストリビューターの存在は便利さをもたらしますが、メーカー・販売店それぞれの立場から見るとメリットもデメリットも存在します。

今回の記事では、そんなディストリビューターの役割、メーカー側と販売店側のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

 

ディストリビューターの役割

ディストリビューターは、メーカー(製造業者)から商品を購入し、それを小売業者または最終消費者に販売する役割を果たします。

ディストリビューターはサプライチェーン(供給連鎖)の重要な一部を担っており、メーカーと消費者の間を結ぶ「中間業者」としての役割を果たしているのが特徴です。

日本の物流は、こうしたディストリビューターの存在によって支えられていると言っても過言ではありません。

現に、メーカーは直接消費者に商品を届けるわけではありません。

工場から自宅に届けられる製品というのは、ほとんどありません。

その製品を間に入って購入し、小売業者や消費者に届ける存在、それがディストリビューターです。

つまり、ディストリビューターが間に入らなければ、メーカーと消費者の購買行動は制限されるということです。

その物流を止めないよう、間に入って「橋渡し」を担っているのがディストリビューターとなります。

 

ディストリビューターのメーカー側のメリット・デメリット

ここからはディストリビューターのメーカー側のメリット・デメリットを解説します。

メーカー側のメリット

■市場アクセスの拡大

ディストリビューターは通常、広範囲にわたる顧客ネットワークを持っています。

これにより、メーカーは自社で直接営業活動を行わなくても多様な顧客に製品を提供することが可能となります。

特に新規市場への参入や海外市場での販売を考えているメーカーにとっては、地域の市場知識や業界のノウハウを持つディストリビューターとのパートナーシップは大きなメリットとなるでしょう。

■在庫管理の負担軽減

ディストリビューターが大量の在庫を購入・管理することで、メーカーは在庫コストを削減できます。

さらに、在庫管理に関連するリスク(例えば、需要予測の誤りによる在庫過剰や在庫切れ)もディストリビューターが負担します。

これにより、メーカーは主力である製造活動に集中できるわけです。

■物流と配送の効率化

ディストリビューターは一般的に商品の保管、運搬や配送といった物流業務を行います。

メーカーがこれらの業務を自社で行うと、リソースや時間が大量に必要となり、それが製造業務に影響を及ぼす可能性があります。

逆にディストリビューターとパートナーシップを組むことで、メーカーは物流業務の負担を軽減可能です。

それにより、本来の事業に専念できるというのも魅力と言えるでしょう。

メーカー側のデメリット

■選択権の喪失

ディストリビューターを介して商品を販売すると、メーカーは商品の販売方法、価格設定、販売先等についての直接的な選択権を失う可能性があります。

これは、ブランドイメージに対する影響が出るだけでなく、ディストリビューターが自社の戦略に従って商品を販売してくれるかどうかによっても左右されるでしょう。

■利益の分配

ディストリビューターは、製品の販売から利益を得ます。

これは、メーカーが直接販売を行う場合に比べて、製品あたりの利益が減少する可能性があることを意味します。

ディストリビューターは、販売した製品の量に応じたマージンを取得するか、もしくは固定の手数料を取得することが一般的なので、メーカーとどう折り合いをつけるかが重要となるでしょう。

■情報共有の壁

ディストリビューターが製品の最終的な消費者と直接関わるため、メーカーは市場の動向や消費者の反応についての情報が遅れるか、不十分になる可能性があります。

これは製品開発やマーケティング戦略の策定に影響を及ぼす可能性があります。

ディストリビューターが得た市場情報を適切に共有できない場合、メーカーは市場のニーズやトレンドに素早く対応するのが難しくなるかもしれません。

 

ディストリビューターの販売店側のメリット・デメリット

ここからはディストリビューターの販売店側のメリット・デメリットを解説します。

販売店側のメリット

■商品選択の多様性

ディストリビューターは無数のメーカーの製品を取り扱います。

そのため、販売店は多種多様な製品を一カ所で取り揃えることが可能です。

これにより、顧客のさまざまなニーズに対応でき、幅広い顧客層を取り込むことが可能になります。

消費者にとっても商品選択が自由にできるというのは、それだけで魅力的なことではないでしょうか。

■量的な柔軟性

ディストリビューターは大量の在庫を保有しています。これにより、販売店は需要に応じて製品を注文できます。

大量の在庫を自社で保管する必要がなくなり、在庫管理のコストやリスクを削減できます。

メーカーだけでなく販売店も在庫のコストやリスクを軽減できるため、ディストリビューターの存在は欠かせません。

■サポートとサービス

ディストリビューターは製品のマーケティング、販売支援、トレーニング、アフターサービスなどを提供することがあります。

これらのサポートは、販売店が製品の知識を深め、売上を向上させ、顧客満足度を高めるのに役立ちます。

必ずしもこれらの仕事はディストリビューターが担うわけではないものの、特定のノウハウを共有することで両者に多大な利益を生み出す可能性も秘めているわけです。

販売店側のデメリット

■価格競争

ディストリビューターは同じ製品を複数の販売店に供給するため、販売店は価格競争に直面することがあります。

顧客が他の販売店でより低価格の同一製品を見つけた場合、販売店は売上を失う可能性があります。

そういった価格競争のリスクは常に孕んでいると言えるでしょう。

■製品供給の不確実性

ディストリビューターが在庫を切らす、またはメーカーからの供給が一時的に停止すると、販売店は製品の供給に問題を抱えることがあります。

これは特に、高需要期や製品の生産が制限されている場合に大きな課題として立ち塞がるでしょう。

製品の供給を第三者に任せるというのは、その分だけリスクがあることも意味します。

■直接的な関係の欠如

ディストリビューターを介して製品を取得すると、販売店はメーカーとの直接的な関係を持つことが難しくなります。

これは、製品の改善やカスタマイズの要求を直接メーカーに伝えることが困難になることを意味します。

また、メーカーから直接情報を取得することが難しくなり、製品の最新情報や将来の製品開発に関する情報が遅れる可能性もあるでしょう。

そういった背景から、直接取引したい販売店にとっては、ややディストリビューターは扱いが難しい側面もあると言えるでしょう。

 

ディストリビューターが活躍している業界

ディストリビューターは多くの業界で重要な役割を果たしています。

特に製品が複雑で、顧客がサポートや教育を必要とする場合や、幅広い顧客基盤に製品を届ける必要がある場合には、その存在価値も計り知れません。

■IT業界

IT業界はディストリビューターの活躍が特に目立つ分野です。

特にソフトウェアやハードウェア製品の販売では、ディストリビューターはメーカーと顧客との間の重要な橋渡し役を果たします。

彼らは製品の販売だけでなく、製品の設定や保守、サポートに関する教育も提供するなど、その存在は欠かせないものとなっています。

■医療業界

医療機器をはじめ製薬業界でも、ディストリビューターは重要な役割を担っています。

特に医療機器の場合、製品の性質上、専門的な技術や知識、トレーニングが必要です。

そのため、ディストリビューターの存在が重要とされています。

■自動車業界

自動車部品の製造業者は、多数の小売業者や修理業者へ製品を提供するためにディストリビューターを利用するのが一般的です。

部品の種類が非常に多く、それぞれが特定の車種やモデルに対応しているため、ディストリビューターが在庫管理や物流を担当することで、製造業者は製造に集中することができます。

■食品業界

食品業界でもディストリビューターは重要な役割を果たします。

生鮮食品から加工食品まで、食品業界は広範であり、レストランやスーパーマーケット、学校や病院など、様々な種類の顧客に製品を供給する必要があります。

ディストリビューターはこれらの製品を一括して管理し、顧客のニーズに合わせて製品を提供しているのが特徴です。

 

これらの業界では、ディストリビューターは製品を広範な顧客に届けるための主要なチャネルであり、製品の専門的なサポートも提供しているのが特徴です。

これにより、顧客は製品の選択肢を広げ、製品の使用に必要な知識とサポートを得ることができます。

一方、メーカーは製品の販売範囲を広げ、顧客サービスを向上させ、最終的には製品の売上を増加させることができます。

しかしながら、これらの業界でディストリビューターが活躍する一方で、直接販売を選択する企業も出始めているのが特徴です。

特に、デジタル技術の進歩により、企業は自社のオンラインプラットフォームを通じて直接顧客に製品を販売することが可能になりました。

このアプローチは、ディストリビューターを通じて製品を販売するときに生じるコストを削減し、顧客との直接的な関係を確立することを可能にします。

それぞれの販売戦略にはその独自のメリットとデメリットがあります。

企業は製品の性質、顧客の需要、市場環境などを考慮に入れて、自社に最適な販売チャネルを選択しなければなりません。

それがディストリビューターを介した販売であるか、または直接販売であるかにかかわらず、適切な販売戦略は企業の成功にとって不可欠となるでしょう。

 

まとめ

ディストリビューターは、製造から販売までの連携を可能にし、製品の流通を円滑に行う役割を果たしています。

その役割は、メーカーや販売店にとって多くのメリットを提供しますが、デメリットも存在します。

主要なメリットとしては、市場アクセスの拡大、在庫管理の軽減、ローカル市場への適応能力があります。

一方、コントロールの失失、利益の分配、情報の非対称性などのデメリットも存在するわけです。

ただし、ディストリビューターは多くの業界、特に電子機器、自動車、食品・飲料などで不可欠な存在となっています。

その役割を理解することは、ビジネスエコシステムの全体的な理解に繋がり、より効率的なビジネスモデルの策定に役立つのではないでしょうか。

 

 

 

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#カケハシ 編集部

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